海事プレス社による塩谷健社長インタビュー

今年1月、日本ペイントマリンの社長に塩谷健氏(写真)が就任した。工業用塗料を手掛ける日本ペイント・インダストリアルコーティングス(NPIU)社長との兼務となり、「マリンとNPIUの両リソースをうまく活用し、コラボレーションやシナジー創出につなげ、市場でのパフォーマンスをより向上させたい」と意気込む。業界の環境対応が大きな課題となる中、昨年1月に市場投入した次世代型加水分解船底防汚塗料「FASTAR」は市場の評価を得て、昨年末での採用実績が102隻となった。今年は昨年の2倍を超える、「250隻以上の実績をつくりたい」とする。

更に250隻の船に 当社の船底塗料をご採用頂きたいと考えている。

― 社長就任の感想と、抱負は。
「NPIU社長との『兼務』という点に意味があると受け止めている。グループのリソース全体でそれぞれの事業を考えた方が、より効率が上がる部分もあり、今後はマリンとNPIUの人材や技術のリソース、調達能力といった面で、さらなる連携やシナジー創出が求められるだろう。両社の『グループリソース』をうまく活用し、それぞれの市場でのパフォーマンスを上げていく。2社のトップとしてそうした取り組みができることは非常に面白いし、私の抱負になると思っている」

― 今後の経営方針と目指す組織について。
「グローバルで見たときの舶用塗料のマーケットは成長産業だと捉えており、我々は事業として、そこにミートさせていかなければならない。そのためには、環境対応や燃費向上、揮発性有機化合物(VOC)低減といった顧客の方針を常に意識して、技術開発や販売サービスを向上させていく必要がある。私の職務範囲としては船舶用と工業用のシナジーが主軸となるが、範囲を超えて全世界にわたる日本ペイントグループのリソースをより相乗的に活用することにより、市場や顧客からの期待に応えていきたい。」

― 現在の最大の経営課題は。
「直近の課題は、様々な原材料の価格が軒並み高騰していることだ。当社は塗料メーカーのため、どうしても石油由来の原材料が多く原油価格の上昇は事業収益に直接的に影響する。加えて亜酸化銅や亜鉛といった金属系の原料価格の高騰やサプライチェーンの世界的な混乱なども注視を必要とする状況だ。目下、グループのグローバルレベルでの調達力を最大限に活用して調達ソースの拡充やルートの最適化、コストの抑制に取り組んでいるが、一時的には自助努力の限界もあり、お客様への事情説明と理解を得た上で価格の改定も進めさせていただいている。ご理解に報いるためにも、サプライヤーとしての存在価値を高めていくよう更なる努力を継続していきたい。」

― 舶用塗料の事業環境と実績、今後の展望は。
「活況な海運業やコンテナ船の発注拡大など事業環境へのプラス要素は多い。一方で、我々は市況に依存するのみでなく、顧客要望にミートする製品とサービスをサスティナブルに供給していく責任がある。生産販売実績に関しては、21年度を22年度が上回る見込みだ。一方で、収益については現材料高騰のインパクトをどこまで内部吸収できるか、あるいは顧客の理解を得て製品価格への反映を実現できるかを見極めていく必要がある」

「昨年1月、業界初のナノ技術を塗料樹脂に採用した次世代型加水分解船底防汚塗料『FASTAR』を発売した。塗膜の厚みを従来品比で約3割減らすことができ、塗装工程を短縮できる。必要膜厚が少なければ、労働負荷やコスト削減にもつながる。海運が活況の時期に、こうした戦略的な商品があることは我々の強みだ。昨年1年で102隻に採用いただき、顧客や時代のニーズに合致した製品を出せている実感がある。今年も既に200隻以上の引き合いをいただいており、昨年の2倍を超える250隻以上の採用を目指したい」

― 貴社の製品、サービスで環境規制にどう貢献するか。
「『FASTAR』を軸に、環境対応に貢献したい。FASTARの採用で塗料の使用量が減れば、VOC排出量が低減でき大気汚染防止に貢献できる。海洋への防汚剤の流出を低減することで海洋汚染防止に貢献ができる。また、海水との摩擦抵抗を低減する機能により燃費向上と排出CO2の削減を図ることができる。当社従来品や他社製品に対しても優位性が高いと自負している」

「より長期的には、防汚剤の溶出量をゼロにするような船底塗料の開発も進めており、さらなる燃費向上やVOC低減、二酸化炭素(CO2)排出低減に向けたコア技術や基礎技術の開発も、独立したR&Dチームで従来から取り組んでいる。また、例えば工業用分野で開発を進めている技術など、グループ内の技術の船舶への適用と展開についても検討する。グループ内での連携に加え、産学での研究開発や、異なる業界とコンソーシアムを組んで技術開発に取り組むなど、将来的を見据えそこまで発展させたい」

本内容は2022年5月16日付、日刊海事プレス及び、海事プレスONLINE《舶用社長インタビュ-》に掲載されたものです。

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